NFTに最適なERC規格は? ERC-721、ERC-1155、ERC-4907の違い。
本記事では、イーサリアム上で発行されるトークンを理解するために重要な「ERC規格」について解説します。NFTを発行するときに使われるERC-721とERC-1155の違いを明らかにするだけではなく、新しく生まれたERC-4907のユースケースについても考えます。本文を読めば、NFTを発行するときに最適なERC規格がどれであるか判断できるようになるはずです。
ERC規格(Ethereum Request for Comments)とは?
ERC(Ethereum Request for Comments)とは、EIP(Ethereum Improvement Proposals)と呼ばれるイーサリアム開発コミュニティの利便性を高める提案に関する議論を経て標準化されたスマートコントラクトの規格のことを指します。
一番有名なERC規格は2015年11月19日に誕生したERC-20です。ERC-20は、各トークンの核となる機能を標準化したもので、この規格に沿って作られた全てのトークンはERC-20対応のCEXやDEX、ウォレットなどと互換性があります。ちなみに、ERCの後に続く番号はGithubで提案された順番を示しています。
ERC-20が誕生する前のトークンはそれぞれ仕様が異なっており、各サービスはその都度、個別に対応する必要がありました。ERC-20が生まれたことにより、各サービスの追加対応が不要になり、新しいトークンの取り扱いを効率的に進めることが可能になったのです。
ERC-721とERC-1155の違い
現在、NFT(Non-Fungible Token)を発行する際に最もよく利用されるERC規格は、ERC-721です。ERC-20ではお互いに代替可能(Fungible)なトークンしか発行することができません。一方、ERC-721では一意のトークンIDを設定することでお互いに代替不可能(Non-Fungible)なトークンを発行することができます。これによって、代替不可能性のある資産であるアート作品やゲーム内アイテムなどをNFTとすることで、唯一無二の価値をデジタル上で表現することが可能になります。
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ERC-1155もNFTを発行するときによく目にするERC規格です。ERC-1155はひとつのスマートコントラクトで、ERC-20の特徴を持つ代替可能なトークンとERC-721の特徴を持つ代替不可能なトークンのどちらも発行することができます。さらに、ERC-1155では複数のアドレス宛にまとめてトークンを送ることができるようになり、ガス代の節約と利便性の向上が可能になりました。
ERC-1155の誕生によって、より流動的かつ創造的なNFTのユースケースを考えることができます。例えば、ブロックチェーンゲーム内でキャラクターとその保有するアイテムを一緒に転送したい場合を考えてみましょう。今までは、それらを一つひとつ別々に送る必要があり、ガス代がかかるだけではなく手続きも煩雑でした。しかし、ERC-1155を利用すると、キャラクターとその保有するアイテムをまとめて転送することができます。
このように、ERC-1155はERC-20やERC-721と比べて拡張性が高いですが、課題もあります。それは、現在NFTの規格として主流であるERC-721と互換性がないことです。そのため、すでに運用されているブロックチェーンゲームの多くがERC-1155に対応しておらず、ERC-721を継続して使っているのが現状です。
ERC-4907の可能性とユースケース
ここまでNFTの規格として、ERC-721とERC-1155を解説してきました。ただ最近になって、NFTにレンタル機能をもたせるERC-4907という規格が新しく登場しています。ERC-4907では、ERC-721にアドレスを付与できる役割「user」とその役割を自動的に無効化する時間「expires」を追加しました。要するに、「user」でNFTに使用許可と時間制限を与え、「expires」でuserを自動失効させることにより、NFTのレンタルを実現します。
ERC-4907の使い道としては、ブロックチェーンゲームにおいてNFT所有者が自身のキャラクターやアイテムを他のユーザーに一定期間レンタルし、自動で返却させる機能などが考えられます。また自身の所有するNFTアートを一時的にNFTギャラリーや他のコレクターにレンタルする機能も需要がありそうです。このように、新しいNFTのユースケースとして普及していく可能性を秘めたERC規格だといえるでしょう。
目的によってERC規格を使い分ける
本記事では、ERC規格の説明から始まり、ERC-721とERC-1155、ERC-4907の特徴と違いについて述べてきました。本文でも述べたように、NFTを発行するときには機能だけに着目するのではなく各々のERC規格がどのくらい普及しているかも考慮にいれて検討する必要があります。つまり、どの規格が優れているかではなく、NFTを発行する目的に応じてERC規格を使い分けることをおすすめします。