昨今、「ビッグデータ」、「データ活用」、「データ連携」など、様々なデータ関連の見出しを見る機会が増えてきているように感じます。総務省が公表している『情報通信白書』では、ICT(Information and Communications Technology:情報通信技術)の普及により、大量のデジタルデータの生成、収集、蓄積が進み、それらの情報をAIにより分析し、業務処理の効率化や予測精度の向上、最適なアドバイスの提供などに活用することで、現実世界において新たな価値創造につながり、データは「21世紀の石油」とも言われるようになっていると述べられています。
このように、データ分析技術の進歩等の影響により、従来以上に個人情報に対する意識が高まりつつあり、「個人情報の保護に関する法律」(以下「個人情報保護法」といいます。)も実態に即したものである必要があり、さらに、保護と利活用のバランスを考慮したものである必要があります。令和2年の個人情報保護法の改正はこのような観点に基づいて実施されたものとなっており、今回はこの改正の概要について説明をしていきます。
個人情報保護法とは、利用者や消費者が安心できるように、企業や団体に個人情報をきちんと大切に扱ってもらった上で、有効に活用できるよう共通のルールを定めた法律です。
個人情報保護法が定義している「個人情報」とは、
と、されています。
個人情報保護法は、個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済及び豊かな国民生活の実現に資するものであることとし、その他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目的としています。
令和2年3月10日第201回通常国会に提出された「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」は、令和2年6月5日の国会において可決、成立し、令和2年6月12日に「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」が公布されました。改正法の施行は一部を除き、公布後2年以内とされております。この改正の内容は、下記の6つのテーマに分かれています。
※「オプトイン」:個人情報取扱事業者が個人データを第三者に提供するために、あらかじめ本人の同意を得ること。
※「オプトアウト」:個人データを第三者に提供することについて通知又は認証し得る状態にしておき、本人が反対しない限り、第三者への個人データの提供に同意したものとみなすこと。
※「仮名加工情報」とは、他の情報と照合しない限り個人を特定することができない ように加工された個人データをいう。提供先において個人データとなることが想定 さ れる情報の第三者提供について、本人の同意が得られていること等の確認を義務化
※https://www.ppc.go.jp/files/pdf/200612_gaiyou.pdf(個人情報保護委員会が公表する「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律」の概要資料より抜粋)
この改正個人情報保護法は、平成27年改正個人情報保護法に設けられた「いわゆる3年ごと見直し」に関する規定(附則第12条)に基づき、関係団体・有識者からのヒアリング等を行い、実態把握や論点整理等が実施されました。また、個人情報に対する意識の高まり、技術革新を踏まえた保護と利活用のバランス、越境データの流通増大に伴う新たなリスクへの対応等の観点から、上記のような改正が実施されました。
総務省は、過去のデータなどから将来の問題発生を予見して問題が起きる前に対応する予測・予防型サービスや、個人情報などを安全かつ有効に活用して個人にカスタマイズして情報提供するサービスの発展を期待しています。また、内閣府は「Society 5.0」を我が国が目指すべき未来社会の姿として提唱しています。ここで、Society 5.0は、「サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会」と定義されています。
このSociety 5.0で実現する社会は以下のような社会であるとされています。
IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服します。また人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されます。社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重しあえる社会、一人一人が快適で活躍できる社会となります。
※(内閣府HP 『Society5.0』より 抜粋https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/)
上記からも分かる通り、Society5.0の実現のためには、多種多様なデータがつながることにより新たな付加価値が創出される産業社会を実現していくための取り組みや、企業のデジタル面での経営改革、社会全体でのデータ連携・共有の基盤づくり、安全性の確保を行うための措置を講じることが重要になります。このようにデータの利活用が不可欠となってきている実態に合わせて、個人情報保護法は、個人の権利・利益の保護と個人情報の有用性とのバランスを図ることを基本的な考え方としています。この基本的な考え方をもとに、令和2年の個人情報保護法の改正では、データ利活用に関する施策の在り方の観点から、
①「仮名加工情報の創設」
※「仮名加工情報」:他の情報と照合しない限り特定の個人を識別することができないように加工された個人情報
②「提供先において個人データとなることが想定される情報に関する規律の明確化」
に関する改正がありました。この改正により、個人の権利が侵害されるリスクを低下させつつ、情報の分析・活用が可能になり、競争力の強化につながることが想定されています。個人情報保護法が、単に個人情報の保護のみを目的とするのではなく、個人情報を適切かつ効果的に活用することで、新たな産業の創出並びに活力のある経済社会及び豊かな国民生活の実現することも目的としており、個人の権利・利益の保護と個人情報の有用性とのバランスを図るための法律であるということを再度認識することが重要であると考えています。
個人情報保護法は単に個人の権利・利益を保護するのみではなく、個人情報の有効活用のバランスを図るための法律となっています。また、内閣府が掲げるSociety5.0でも掲げている通り、様々な課題を解決するためにはデータの利活用が不可欠となってきています。
東京トークンが支援する企業のひとつJasmyは、「データの民主化」という、個人のデータは個人の手に帰属すべきという基本思想のもと、個人にとっても企業にとっても、自らの便益はもちろんのこと、社会全体の共通利益向上の為に、気兼ねなくストレスなくデータを提供しあえる社会の実現を目指しています。そのために、個人の周りの必要なデータの管理権限を永続的にコントロールし、データを維持保管できる安心感を追求するとともに、企業にとっては即座にかつ広範囲で個人から許諾を得たデータを利活用できる利便性を追求していきます。最後に、これらの社会を実現するためにJasmyが必要と考えている技術等はホワイトペーパーにまとめておりますので、ご参照いただければ幸いです。
Jasmyホワイトペーパー(https://www.jasmy.co.jp/images/whitepaper.pdf)
【参考資料、参考HP】
≫個人情報保護委員会『個人情報保護法ハンドブック』
≫東京都HP 『個人情報保護法の概要』https://www.johokokai.metro.tokyo.lg.jp/
≫総務書HP 『令和元年版情報通信白書』https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/pdf/index.html
≫個人情報保護委員会HP 令和2年 改正個人情報保護法について
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/kaiseihogohou/
≫ 総務省HP 『ICT利活用の促進』
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/ictriyou/bigdata.html
≫ 内閣府HP 『Society5.0』
https://www8.cao.go.jp/cstp/society5_0/
≫ 経済産業省 『データ利活用のポイント集 データ利活用の共創が生み出す新しい価値』
https://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/pdf/datapoint.pdf
≫中央経済社 『令和2年改正個人情報保護法Q&A』